中出 阪蔵 1981年製
中出 阪蔵 1981年製
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板セラック(サイドバック:カシュー)
糸 巻:ヘフナー
弦 高:1弦3.1mm/6弦4.0mm
〔製作家情報〕
1906年三重県松坂市生まれ。1919年宮本金八の工房に弟子入りし、主に弦楽器の製作に従事。1929年にアンドレス・セゴビアが初来日をした際に宮本の指示でセゴビア使用のギターをコピーする機会を得、ここからギター製作への本格的な移行が始まります。その後1933年に独立。戦争による疎開などで住まいを転々としながらも製作を続け、1950年代に巻き起こる空前のギターブームにのって生産数を飛躍的増加させ、1960年代までの最盛期は河野賢と並んで日本のギター製作界を支える存在になります。子息の輝明氏(長男)敏彦氏(二男)幸雄氏(三男)もギター製作家となり、それぞれ独立したブランドとしてその後の日本のギター製作界の中心を担う存在となってゆきます。井田英夫、稲葉征司、星野良充、田中俊彦、今井博水等多くの門下生を輩出し、大きな影響力を保ったまま1993年に87歳で亡くなりました。現在も中古市場では人気の高いアイテムとなっており、近年では海外からもジャパニーズヴィンテージを代表するブランドとして需要の高まりを見せています。
〔楽器情報〕
1981年製No.3000モデル中古です。当時No.5000に次いでハイエンドモデルとしてカテゴライズされていたもの。ヘッドに彫刻をあしらい、ロゼッタやパーフリングなどの意匠と、良質な中南米ローズウッド材を横裏板に使用した豪奢なモデル。全体的に渋く、まろやかで落ち着いた音色はこのブランドならではの滋味を湛えており実に心地よい響き。洋の東西を問わず個性的な音色として確立したものと言えるでしょう。
内部構造は7本の扇状力木が駒板位置に配されたトランスヴァースバーを貫通しボトム部でハの字型のクロージングバーが受け止める配置。また7本の扇状力木のうち低音側の2本はサウンドホール下のハーモニックバーをこちらはトンネル状に潜り抜けてサウンドホール縁にまで伸び、逆に高音側は一番端から2番目の力木のみ同様にサウンドホール縁に伸びている設定になっており、ロベール・ブーシェ的な構造を基本として中出氏の工夫を加味したような構造になっています。レゾナンスはGに設定されています。
表面板はセラック、横裏板はカシューによる仕上げで、表面板全体に、特に高音側には演奏によるスクラッチ傷が多くあります。裏板は若干の浅い摩擦痕があります。割れ等の修理履歴は無く全体的に年代相応の状態。ネックやフレット等演奏性に関わる部分での問題はありません。ネックはDシェイプで通常の厚みで加工されています。糸巻きはヘフナー製。ハードケース付属。