新着 パウリーノ・ベルナベ 1992年製
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 3.2mm/6弦 4.2mm
〔製作家情報〕
パウリーノ・ベルナベ1世(1932~2007)スペイン、マドリッドの製作家。自身も演奏を能くし、タレガの高弟ダニエル・フォルテアにギター演奏を師事していたのは有名な話。製作家としてはホセ・ラミレス3世の厚い信頼のもと、同工房にて1950年代から1960年代にかけて職工長を務め、この巨大ブランドの黄金期を支えた最重要人物の一人として、まずはギター製作史にその名を残す存在となりました。その後1969年に独立してからは伝統的な製法に則りながらも独自のメソッドによる個性的なギターを作り続け、1974年にドイツ、ミュンヘンで開催された国際クラフト博覧会で金メダルを受賞。そして往年のギターファンにとってはなんと言っても忘れ難い、ナルシソ・イエペスが愛用することになる有名な10弦ギターを製作することになります。息子のパウリーノ・ベルナベ Jr(1960~)は幼少の頃より父の仕事姿に親しみ、17歳の時には正式に弟子入りし20年以上に及ぶ厳しい修行と共同製作の時期を経て、2007年に1世亡き後はこのブランドを引き継ぎます。その後現在に至る2世の時代は父親のブランドコンセプトを十全に継承しつつ、より時代のニーズに合わせた(コストパフォーマンスとプレイヤビリティの双方において)充実したラインナップを展開し、若手のプロギタリストの使用率も高くなっている。現在マドリッドを代表するブランドの一つとして高い評価を得ています。
〔楽器情報〕
ベルナベ1世作となる1992年製Usedの入荷です。同ブランドは2000年前後から使用材のグレード等によりモデルラインナップを多様化し、ミドルクラスからプロフェッショナル仕様、そして極めてハイスペックな限定生産品まで安定した供給を行い、いわゆるラミレス系マドリッドスクールの中では最もシェアを拡げた工房と言えます。ラミレス系統の濃密な音色を求めるユーザーの好みにしっかりとフィットしたモデルはどれもクオリティが高く、ベルナベの時代感覚と工房スタッフのスキルの高さが如実に出ていると言えるでしょう。本作はそうしたブランド展開に乗り出す前のものでモデル名はありませんが、現在のEspecialモデルにあたるスペックの一本です。
その迫力ある鳴りはインパクトがあり、特性は大きく異なりますがあのフレタにさえ匹敵するような音圧の高さ。粘りのない、木を叩いたようなごつごつとした音はたっぷりと艶を湛えながらもどこか物質的なところがあり、奏者のタッチの工夫によって表情を帯びてくるような感覚です。これはラミレスのロマンティックな音という美点と比較すると、実ははるかにストイックな印象があります。
表面板力木配置はサウンドホール上側(ネック側)一本のハーモニックバーとしっかりとした厚みと広さをもった補強板が一枚設置され、ホール下側(ブリッジ側)には1本のハーモニックバーとその中央部分(つまりサウンドホール真下部分)から高音側と低音側に向けて各1本の斜めに伸びるバーを配置、そしてボトム部にも2本のハの字型に配されたクロージングバーが設置されており、ちょうどブリッジ部分を菱形に囲むような形。その菱形の中心に表面板の木目に沿うように平行に設置された3本の力木(実際には一番低音側の1本は後述のブリッジプレートを境にセパレートになっているので4本)とブリッジ位置に設置された薄いプレート板という独特な力木構造。力木もバーもやや太めの強固なつくりをしており、それが逆に薄く加工された表面板を支える設計となっています。また表面板の薄さに対して裏板は厚めで、横板は内側にシープレス材を貼り付けたラミレス的な二重構造を採用。レゾナンスはG#~Aに設定されています。
全体にラッカーによる再塗装が施されており、そのた30年を経過した楽器としては傷は少なめの状態です。その他は割れ等の大きな修理履歴はありません。ネックは真っすぐを維持しており、フレットと指板は1~3フレットで若干の摩耗見られますが演奏性には問題のないレベルです。ネックシェイプはやや薄めに加工されたDシェイプで、弦高は現在値で4.2/3.2mm(12フレット上)となっておりほぼ出荷時のままですが弦の張りは意外なほどに柔らかいので押さえやすく感じます。
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