マヌエル・レジェス 1世 1991年製
マヌエル・レジェス 1世 1991年製 ブランカモデル
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.2mm/6弦 2.8mm
[製作家情報]
1934年グラナダ、パジェーナ生まれ。10歳の時にコルドバに移住し、その後亡くなるまで同地にて製作。もとはフラメンコ・ギタリストであった彼が、ある歌い手から譲り受けたぼろぼろのギターを自ら修理するもののその仕上がりに満足できず、それならばと独学で自分のギターを作り始めます。その後はホアキン・サンチェス・ガリステーロの工房で助言を得ながら製作技術を磨き、1956年にはギタリストのぺぺ・マルティネスの紹介で、名工マルセロ・バルベロ1世との知遇を得ます。この稀代の名工との、亡くなるまでのわずか1年という交流がマヌエルに決定的な影響を与えたことは有名な話。そして24歳でコルドバの有名な観光地ポトロ広場に面した場所に独立して工房を開き、飛躍的に完成度を増していった彼のギターは評判になります。1979年には楽器製作に更に集中するためアルマ通り7番地の静かな環境に工房を移動。多くのギタリストが彼の工房を訪れそのギターを購入していきますが、1980年代に当時大人気ギタリストであったヴィセンテ・アミーゴが使用することでその名声がピークに達します。フラメンコに必要な要素を十全に備えながら、その繊細とさえ言える音色と表現力、造りの細やかさ、高度な演奏性などでクラシックギタリストからも高い評価を得て、20世紀後半を代表するフラメンコブランドとなりました。2014年に惜しまれつつこの世を去った後、工房は子息のマヌエル・レジェス・イーホが受け継いでいます。
[楽器情報]
マヌエル・レジェス製作1991年製 フラメンコ ブランカモデル Usedの入荷です。
オリジナルのセラック塗装からラッカーへ再塗装が施されており、表面板のゴルペ板縁部分には演奏による摩耗をタッチアップした際の変色が見られます。リフィニッシュ後もしっかりと弾き込まれており、ゴルペ板周辺やブリッジ下箇所など弾き傷がやや目立つほか、指版脇高音側に割れ補修歴があります。ネックは真直ぐを維持しており、フレットはこれもおそらく一度交換がなされたと思われ、現状で摩耗ほとんどなく適正値を維持しています。
表面板内部構造はサウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木、ブリッジ位置には駒板よりもほんの少し横幅のある補強プレートという配置。レゾナンスはG~G♯の間に設定されています(レジェスはこのあと2000年代にはボトム近くで扇状力木どうしの間を繋ぐようにして短いストラットを設置するという特徴的な構造を採用しています)。
繊細さとシャープネスが際立つレジェス的な特徴がここでは異なり、力強く開放的で、柔らかく、明朗な鳴りが印象的な1本。フラメンコとしての必要不可欠な身振りは十全に備えており、やや倍音が大きく響いてしまうところはあるものの、この柔和な表情はレジェスの別の一面として捨てがたい魅力があります。しかしながらやはり凡百のブランドとは一線を画す高度な表現能力は秀逸。
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