マルセロ・バルベロ・イーホ 2001年製 Para Casa Arcangel

マルセロ・バルベロ・イーホ 2001年製 Para Casa Arcangel

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 3.9mm

〔製作家情報〕
1943年マドリッド生まれ。父は20世紀前半のスペインを代表する名工の一人マルセロ・バルベロ1世(1904~1956)。わずか13歳の時に父バルベロ一世が他界したあと、その弟子であったアルカンヘル・フェルナンデス(1931~)が1957年に自身の工房を開き、バルベロ・イーホは徒弟としてアルカンヘルの工房に入ることになります。アルカンヘルは最初彼をあえてホセ・ラミレス3世の工房に修行に出し、このスペイン最大のブランドで製作の基礎を学んだ彼は、1960年の17歳の年にはすでに最初のギターを製作するまでに技術を磨いていきます。その後アルカンヘル工房に戻り、師と共にまさに職人ならではの実直さと探求心で製作に打ち込みます。「アルカンヘル・フェルナンデス工房品」のラベルを貼って出荷されたそのギターは実質バルベロ・イーホ本人による完全手工品であり、師アルカンヘルに勝るとも劣らない非常なクオリティを有したものとしてコアなギターファンに愛されました。1990年代後半からは自身のオリジナルラベルでの製作も並行して行い、ますます洗練と充実の高まりを見せていた彼でしたが、2005年1月に早すぎる死を迎えてしまいます。渋くやや硬質な粘りを持ったその音色は師アルカンヘル、さらには父バルベロ1世にまでつながるスペインギター最良の伝統を感じさせ、特に晩年に近づくほどに評価の高まりを見せるその楽器は、まさにスペインギター随一の逸品としての評価を不動のものとしています。

〔楽器情報〕
マルセロ・バルベロ・イーホ 2001年製作のクラシックモデル、アルカンヘル工房ラベル(Para Casa Arcangel Fernandez)のUsed です。2005年にその生涯を閉じることになる彼にとって、レイトワークスと言える時期の貴重な一本。アルカンヘル工房の使用材から造作に至るまでの妥協のない品質は言わずもがな、いかにもマドリッド的な重厚さと、あくまでもジェントルな表情、雑味のない響きなど、スペインの伝統を跡付けながら、バルベロ・イーホ自身の個性もまた強く刻印された秀作となっています。

表面板内部構造はアルカンヘル工房のスタンダードとなっているもので、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、計6本の扇状力木がセンターに配された1本を境に高音側に3本、低音側に2本設置されており、ボトム部にはそれらの先端を受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板の位置にはほぼ横幅いっぱいに渡って貼り付けられた補強プレートという全体の配置。6本の扇状力木は(一番高音側の一本を除いて)駒板の幅にほぼ収まるように中央に寄り添って配置されており、これは彼の父バルベロ1世そしてアルカンヘルの特徴的なパターンとなっているもの(フラメンコモデルでは一番高音側の1本は無く、左右対称に5本の力木配置となっている)。ただし本器においてわずかに異なる点としては、各力木の間隔が均等ではなくややイレギュラーな間隔配置となっていることがあげられます。レゾナンスはG#の少し下で設定。

経年による十分な弾き込みの影響もありますが、彼の後期の作としてはふくよかで、いかにもマドリッドらしい重厚さで箱が十全に響いている体感があり、例えばオリジナルモデルの透徹さと優雅さが同居したようなある種の厳しさと比較するとおおらかな味わいがあります。しかしながらその明朗な響きにおいてもどこか慎ましさ、彼ならではのジェントルな音の身振りがあり、これがやはりほかにはない魅力となっています。

割れなどの大きな修理、改造履歴はありません。全体に大小の弾き傷、スクラッチ傷等があります。表面板サウンドホール高音側は簡易保護シートを常用しているため塗装に跡が付いています。ネックは真っすぐを維持しており、フレットは1~2フレットでほんのわずかに摩耗見られますが演奏性には全く問題ありません。ネック形状は薄めのDシェイプでフラットな仕様。弦高値は3.0/3.9㎜(1弦/6弦 12フレット)でサドルには1.5~2.0㎜の調整余剰がありますのでお好みに合わせて低く設定することが可能です。糸巻は出荷時のオリジナルでフステロ製を装着しており、こちらも動作状況に問題ありません。重量は1.60㎏。

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