新着 コルヤ・パンヒューゼン 2014年製
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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:バルジャック
弦 高:1弦:2.5mm/6弦:3.6mm
〔製作家情報〕
1941年生まれ。母親のイレーヌはドイツの名工エドガー・メンヒ(1907~1977)の妹にあたる。1964年に当時トロントに住んでいたパンヒューゼン一家をメンヒが訪れるところからメンヒとカナダスクールの関係、またパンヒューゼンの製作家への最初の道のりが始まります。当時は学校の教師をしていたパンヒューゼンは、トロントに移住し同地の楽器店の為に旺盛な製作活動を行う叔父の姿を見て、製作への興味を持ち始めます。そして1967年に最初の「全く不出来な」ギターを造り上げ(メンヒに当時師事していたJean Larriveeに酷評されながらも)、ギター製作家になることを決意。教師の職を辞して2年間メンヒに師事し、1971年にメンヒがドイツに帰国した際には自身もドイツに移り、1976年までメンヒの工房で働きます。その後トロントに戻り自身の工房を設立、そして1992年に再びドイツに移住しシュトゥットガルト近郊に工房を移設、現在も同地で製作を行っています。
当初彼は叔父の作風を継承した伝統的なスタイルで製作をしており、1970年代メンヒの工房で働いていた時にはメンヒ2世ラベルのギターを手がけるなどしていました。一度カナダに戻り独立した後はモダンギターの潮流へのアプローチも行うようになり、再びドイツに移住してからはその姿勢はより明確化してゆくようになります。叔父メンヒ譲りのドイツ的なしっかりした構築感と様々なユーザーや時代のニーズに合わせた柔軟な感性との融合により生まれた彼のギターは、伝統的な音色にごく自然に現代的な高機能性を付加したような極めて見事なバランスを達成したものとなっており、ヒューバート・ケッペルらの名手が愛用している事でも知られています。
〔楽器情報〕
コルヤ・パンヒューゼン 2014年作 Usedの入荷です。この時期既にラティスブレーシング(格子状力木)構造などのモダンスタイルのモデルにおいても高い成果を上げていた彼の、また別のトラディショナルなスタイルで作られたモデルです。とはいえ叔父であり師でもあったエドガー・メンヒのバルベロ一世的なスパニッシュスタイルを踏襲するわけではなく、ここでパンヒューゼンが試みているのは表面板の木目と平行に配置される(扇状配置ではない)力木と、木目と垂直に交わる方向に(高音側と低音側の横板同士をつなぐように)配置されるバーとの交差によって形成される全体的スクエアな構造で、モダンスタイルの一形態とも見ることができるものです。
内部構造はサウンドホール上下にまずは常套的な各一本のハーモニックバー、そしてサウンドホール高音側と低音側1本ずつの太く厚みのある強固な柱がネックヒール部からサウンドホール下側のハーモニックバーまでがっちりと設置され、サウンドホール周りをしっかりと固定。ボディくびれから下側は表面板の木目と同じ方向に平行に配置された5本の力木、そしてそれらの両端をサウンドホール側とボトム側とで完全にクローズするように受け止めるそれぞれ一本ずつのバー(ただし一番高音側に配置された力木はボトム側のクロージングバーを通過してボディ縁まで到達しています)。そして駒板の位置には表面板横幅いっぱいに渡ってパッチ板が貼られているという全体の構造で、ボディ下部の配置構図に関して言えば、これは河野賢が1970年前後に採用していた力木配置とほぼ同じとなっています(直接の影響関係があったかどうかは定かではありません)。表面板は薄く加工されており、上記の構造によってボディ上部は振動を抑え、ブリッジを中心とするボディ下部を効果的に振動させています。レゾナンスはF#~Gに設定。
メンヒ的なクリアな音響と端正な表情を特徴としている彼ですが、ここで聴かれるのは生々しい力強さを湛えた、マッシヴな木質の響きとなっています。木自体が鳴っているような強烈な発音とその反応の速さはスペインのフラメンコギターをさえ思わせるものですが、パンヒューゼンはここに硬質なニュアンスを加えて音色に洗練を施しています。ネック形状は普通の厚みのDシェイプでフラットな加工がされており、グリップ感はコンパクトな印象。割れなどの修理履歴は無く、表面板は指板両脇にほんのわずかにスクラッチ痕などがあるのみ、裏板は演奏時の衣服の摩擦痕などがありますが、全体に綺麗な状態を維持しています。表面板は薄く加工されているためか、力木の位置に沿ってほんの若干の波うちがありますが、現状継続しての使用には全く問題のないレベル。20フレット仕様。ブリッジサドルは3弦のみ弦長補正を施したオリジナルが装着されています。ネック、フレット等演奏性に関わる部分は全く問題ありません。糸巻はクロアチア製Barjak のEbonyボタン仕様を装着しており、こちらも現状で機能に問題ありません。
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