新着 尾野薫製作 2013年製 ハウザー1世モデル
尾野薫製作 2013年製 ハウザー1世モデル
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板:セラック /横裏板:セラック
糸 巻:スローン
弦 高:1弦 2.9mm/6弦 3.9 mm
〔製作家情報〕
1953年生まれ。中学生の頃からギターを弾き始め、大学の木材工芸科在学中その知識を活かして趣味でギターを製作。 その類まれな工作技術と音響に対するセンスは注目を集めており、愛好家達の要望に応えて27歳の時にプロ製作家としての本格的な活動を開始。 同時期にアルベルト・ネジメ(禰寝孝次郎)に師事し、彼からスペインギターの伝統的な工法を学ぶ。 その後渡西しアルベルト・ネジメの師であるグラナダの巨匠アントニオ・マリン・モンテロに製作技法についての指導を受け、 2001年には再びスペインに渡りホセ・ルイス・ロマニリョスの製作マスターコースも受講している。 さらにはマドリッドの名工アルカンヘル・フェルナンデスが来日の折にも製作上の貴重なアドバイスと激励を受ける等、 現代の名工達の製作哲学に直に接し学びながら、スペイン伝統工法を科学的に考察し理論的に解析研究してゆく独自の方法でギターを製作。 日本でのスペイン伝統工法の受容の歴史において、アルベルト・ネジメと並ぶ重要な製作家の一人として精力的な活動を展開している。 その楽器はあくまで伝統的な造りを基本としながら、十分な遠達性、バランス、倍音の統制において比類なく、極めて透徹した美しい響きを備えた、 現在国内のギター製作における最高の成果を成し遂げたものと言える。
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〔楽器情報〕
尾野薫製作 80号ハウザー1世モデル 2013年製 No.254 Usedが入荷致しました。
尾野氏のハウザーモデルと言えば、トーレスやブーシェ、そしてロマニリョスなど極めてクオリティの高いレプリカシリーズの中でも特に製作家本人との親和性が高いモデルとしてもはや定番化しているともいえる国内屈指の名アイテムです。準拠しているのはもちろんハウザー1世による名品「セゴビアモデル」1937年製ですが、尾野氏はここでもオリジナルのエッセンスに最大限の敬意を払いながら、自身の音響哲学を絶妙にミックスさせ、彼ならではの見事なハウザーに仕上げています。
内部構造はサウンドホール上側に2本(内1本はバーというよりもプレートに近い形状)、下側に1本のハーモニックバー、7本の左右対称の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止める2本のハの字型のクロージングバー、そしてブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いパッチ板が貼られており、ハウザー1世セゴビアモデルの基本構造となっています(これらの力木はとても繊細な加工がされています)。表板と横板の接合部分はペオネス(三角型のウッドブロック)がお互いに3㎜ほどの間隔を空けて設置されており、これは尾野氏のオリジナルになります(現在の同モデルでは大小のペオネスを交互に設置する方法に変更しています)。レゾナンスはF#~Gの少し下に設定。
10年間しっかりと弾き込まれたことにより自然な貫禄が備わり、音圧が高く、きりっと引き締まった重厚感、そしていかにもハウザーらしい心地よい粘りを伴った発音が聞かれます。響きには雑味がなく、しかし決して乾き過ぎず、基音と倍音の配分バランスが絶妙に設定された響きは尾野氏ならではの至芸と言えるでしょう。その重心感覚とバランスは見事なもので、単音では音が粒立ち、和音ではそれぞれの音がしっかりとした遠近感を持って響きます。この特性は例えばバロック音楽や緻密な音響設計が要求される現代音楽などの西洋クラシック音楽において十全な効果を発揮します。音色は指先のほんの微妙な変化にも寄り添い、渋めな音色ながらも表情は実に豊かで多彩、その音楽的なニュアンスはやはり素晴らしい。国内におけるハウザーモデルのひとつの極点といえるモデルです。
表面板の弾き傷タッチアップのため、製作家本人によるセラックニスでの上塗り補修が施されています。指板脇やブリッジ周りなどにスクラッチあとがやや見られますが外観を損ねるレベルではありません。割れなど修理履歴は無く、ネック、フレット、糸巻き等の演奏性に関わる部分も全く問題ありません。ネックシェイプは厚めのDシェイプで感覚的にはたっぷりしたグリップ感ですが、むしろ左手の脱力が自然にできる形状といえます。弦の張りも中庸で、弦長はほんの少し短い645mmで設定されているのでストレスを感じさせません。
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