アントニオ・マリン・モンテロ 2002年製 Flamenco Blanca

アントニオ・マリン・モンテロ 2002年製 Flamenco Blancaモデル

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラックニス
糸 巻:シャーラー
弦 高:1弦 2.7mm/6弦 3.0mm

〔製作家情報〕
1933年スペイン、グラナダ生まれ。家具職人として出発し、のち1959年より同地の製作家エドゥアルド・フェレールの工房に入り製作を学びます。1961年には同工房出身のマヌエル・ベジードとともに共同の工房を立ち上げ、まずはキャリアをスタートさせます。その後独立し製作家としての評価も高めてゆきますが、1977年にある日本人発明家の紹介でフランスの名工ロベール・ブーシェ(1898~1986)との知遇を得て、その作風を大きく変化させていきました。このフランス最大の巨匠はマリンの非凡な才能をすぐに見抜き、その後自身がグラナダに赴いたりまたマリンをフランスに招くなどして親身にギター製作についてのアドバイスを与えています。もともとアンダルシア地方色の濃いギターを製作していましたが、ブーシェとの邂逅を機に、より楽器としての芸術的普遍性の高さを追及してゆきます。音響と造作の両方に於いて、比類ない高みに達したギターはグラナダを代表する名品として現在不動の評価を得るに至っています。また氏の人柄を慕って現在では世界中から若き才能がグラナダに集まるようになり、氏の名前を冠した国際製作コンクールが開催されるまでになりました。もうすぐ90歳を迎えようという現在も甥のホセ・マリンらと現役で製作を続けています。スペインギター製作界最高のマエストロにして最長老の一人。

〔楽器情報〕
アントニオ・マリン・モンテロ製作の定評あるフラメンコモデル 2002年製 No.560 Usedの入荷です。ブーシェモデルに代表されるクラシックモデル(Modelo B、E)ではアンダルシア的なものとフランス的要素が融合した音色を達成した彼ですが、フラメンコではグラナダの伝統に立ち返り極めて円満なフラメンコサウンドに仕上げています。

内部構造(表面板力木構造)もブーシェモデルとは異なり、サウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバーとシンプルな左右対称5本の扇状力木という配置で、ブリッジ位置のトランスヴァースバーやボトム近くで扇状力木の先端を受け止めるクロージングバーは設置されていません。レゾナンスはG~G#に設定されています。

全面セラック塗装仕様。割れなどの大きな修理履歴はありませんが、しっかりと弾き込まれており全体に大小の弾き傷や掻き傷(特に表面板指板両脇からゴルペ板まわりにかけてなど)、衣服等による摩擦、打痕、弦とび痕等があります。横板は演奏時の摩擦等による塗装ムラ、変色等が数か所に見られます。ネックはわずかに順反りですがフラメンコの設定としては標準設定の範囲です。フレットは1~7フレット、また指板は高音側が1~8フレットで摩耗見られますが現状で演奏性には問題ありません。糸巻はシャーラー製を装着、機能的に良好な状態です。

ネック形状は薄めのDシェイプでフラットな加工がされており、コンパクトなグリップ感。弦高値は2.7/3.0㎜、弦の張りは中庸でとても弾きやすく感じます。マリンらしい明朗でシャープな発音、十分な音量はもちろんのこと、フラメンコならではの粘りのある旋律の身振りなどの音響的機能性も申し分なく、このジャンルにおいてもグラナダスクールで一頭地を抜くブランドの良質な一本です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です