山根 淳志 2019年製 ロマニリョスモデル

山根 淳志 2019年製 ロマニリョスモデル

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 2.7mm/6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
1977年栃木生まれ。
幼少の頃より美術・工作・音楽に興味と憧れを抱いていたが、大学在学中に自画像を描いた事がきっかけとなり上達する喜びを得られる物づくりを仕事にしようと考える。また同時に19歳でフォークギターを弾き始め、偶然雑誌でギター製作者の記事を読みその道に入ることを決意。国立音楽院ギタークラフト科に入学し、ウクレレ、エレキギター、スチール弦ギターの製作・修理・調整を学ぶ。卒業後は鷲見英一氏(主にスチール弦ギターの製作)に師事、6年9か月に渡り製作の基本を学んだ後に2009年に地元佐野市で独立して自らの工房を開設する。
2014年頃からはクラシックギター演奏を習い始め、クラシック製作家のアドバイスも受けながら製作も開始。ロマニリョスのモデルをベースにして、スチール弦ギター・ウクレレの製作や修理で培った経験と評価を活かした作品を伝統工法を基本にして製作している。

【楽器情報】
山根淳志 2019年製のクラシックギター30号 ホセ・ルイス・ロマニリョスモデル No.17 Usedの入荷です。山根氏のクラシックにおけるフラッグシップモデルで、伝統的でありながら異様な光を放ち続けたスペインの名工の、その独特な音響特性を不足なく備えた佳品となっています。

弦の弾性が瞬間的に音の粒に昇華したような跳躍感のある発音、低い重心感覚を伴いながら音響全体がきれいなピラミッド型を描くようなバランス感、すっきりとしながらもロマンティックな表情など、オリジナルのエッセンス的な要素を含みつつも山根氏自身の特徴である柔和さの中に自然に落とし込んであり、誠に心地よい一本。

表面板内部構造はボディウエストから上はサウンドホール上(ネック側)に2本、下(ブリッジ側)に1本で計3本のハーモニックバーを設置し、それらすべてのバーの高音側と低音側とに長さ5センチ高さ3~5㎜ほどの開口部が設けられ、計4本の力木が(高音側と低音側それぞれ2本ずつ)これらのバーと垂直に交わるように開口部をくぐりぬけて設置されています。この4本の力木はネック付け根のすぐ脇からウェストの部分まで、つまり表面板上部の長さで設定されており、その先端が表面板下部の扇状力木へと連なってゆくように配置されています。ボディウエストより下は左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いプレート板が貼られているという全体の構造。表面板と横板の接合部にはオリジナルでは大小のペオネス(三角形型の木製のブロック)を交互に設置していますが、ここでは同じ大きさのペオネスを隙間なく設置するノーマルな仕様。ペオネスを除く設計はホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているものと同じもので、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしてスタンダード化している設計の一つ。難度の高いこの設計を山根氏は忠実になぞり、また細部に至る工作も非常な精緻さで、丁寧な作業が行き届いています。重量は1.52kgと軽め。レゾナンスはF#の少し上に設定されています。

特徴的なヘッドとボディの外形的なデザインはオリジナルに準拠していますが、ロゼッタや象嵌などの意匠は山根氏のオリジナル。色味を全体にやわらかめのブラウン色で統一しており、ロマニリョスの圧倒するような威容とは異なる、チャーミングな外観となっています。

割れや改造などの大きな修理履歴はありませんが、表面板高音側は広範囲で弾き傷やスクラッチ痕があり、その他もところどころに1~3センチほどの掻き傷があります。ただしいずれも浅いもので、著しく外観を損ねるものではありません。横裏板はきれいな状態を維持していますが、横板高音側下部に一か所打痕と木目の段差が生じている箇所があります。ただし現時点で割れには至っておらず、継続しての使用に問題ありません。ネック、フレットともに良好な状態を維持しています。ネック形状は薄めのDシェイプ。弦高値は2.7/4.0㎜(1弦/6弦 12フレット)で、サドル余剰が1.0~2.0㎜弱ありますのでさらに弦高を下げることも可能です。

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