ホセ・ゴンサレス・ロペス  2013年

ホセ・ゴンサレス・ロペス 2013年製

ネック:セドロ
指 板:エボニー黒檀
塗 装:セラック
糸 巻:ルブナー
弦 高:1弦 3.0mm/6弦 3.8mm

[製作家情報]
ホセ・ゴンサレス・ロペス、1961年 スペイン、グラナダに生まれ同地で育つ。もともとギター製作とは関わりのない仕事に就いていましたが、ホセ・マリン・プラスエロの妹との結婚を機に1989年、28歳の時にアントニオ・マリン・モンテロの工房に入ります。アントニオとホセの二人の指導のもとおよそ10年の修行を経て1999年に自身のラベルによる最初のギターを製作。アントニオの製作哲学を工法、そして音響において堅実に受け継いでおり、しかも彼自身の高い木工の才からなる非常な完成度を有したそのギターは偉大な二人の師とも比肩しうるものとして、国際的に高い評価を得るに至っています。現在も同工房にて極めて精力的に製作を続けている、グラナダの名ブランドの一つ。

[楽器情報]
ホセ・ゴンサレス・ロペス製作のクラシックモデル、2011年製 No.121 640㎜スケール仕様 Usedの入荷です。モデル名は記載されていませんが、マリン工房のフラッグシップモデルであるアントニオのModelo Bと同じコンセプトで作られていることから、ブーシェモデルと言えるギターです。グラナダでもっとも有名なこの工房のなかでアントニオとホセという二人の大巨匠に続くポジションとして認識されがちな彼ですが、総合的な完成度と確かなアイデンティティは極めてハイレベルなもので、まさに端倪すべからざるブランドと言えるでしょう。本作においてもその工作精度と音響設計、外観における気品のある佇まいなど素晴らしく、グラナダスクールを円満に体現した一本となっています。

内部構造はサウンドホール上側(ネック側)2本、下側(ブリッジ側)1本のハーモニックバー、そして左右対称5本の扇状力木がブリッジ位置にほぼ横幅いっぱいにわたって設置されたいわゆるトランスヴァースバーを貫通してボトム部まで延伸している構造で、アントニオ・マリンのブーシェモデルを踏襲したもの(トランスヴァースバーはアントニオよりも若干高さを低くして加工されている)。レゾナンスはAの少し上に設定されています。

ロベール・ブーシェ同様にAというやや高めのレゾナンス設定ですが音響的に低い重心感覚があり、やや強めの粘りをともなった発音と密度のある音像、ほのかにエコーを纏ったような響きがいかにもクラシカル。グラナダ的な要素とマリン工房特有の迫力も十分に備えながら、あのブーシェが持っていた独特の「暗さ」も垣間見せるところは、工房の中では特異とも言えるキャラクターでしょう。その力強くも抑制された表情のなかに豊かに楽想を表出するところなどもブーシェ的。アントニオが明朗さと悠揚さにおいて、そしてホセが音響的な洗練においてそれぞれのギターをグラナダ的感性の中に性格づけるとして、ゴンサレス・ロペスはそれらの中庸ともいえる着地で図らずもブーシェにもっとも近い音色を魅力的に体現しています。

640㎜のショートスケール仕様。ネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。ネックはほぼ真直ぐを維持しており、フレットは1~3フレットでやや摩耗見られますが演奏性には問題なく、継続してご使用いただけます。全面セラック塗装によるオリジナルの状態です。表面板の指板脇からサウンドホール周りにかけてと駒板下部分などやや弾きキズやその他スクラッチ痕が目立ちます。指板両脇は割れ補修履歴があります。ネック裏は演奏時の搔き傷がやや多く見られます。横裏板は割れなどの大きな修理履歴はなく、衣服等による細かな摩擦跡のほかは比較的きれいな状態を維持しています。

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