カール・ハインツ・ルーミッヒ 2019年製
カール・ハインツ・ルーミッヒ 2019年製
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:表板 セラック /横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.7mm /6弦 3.6mm
[製作家情報]
1953年生まれ。ドイツ、フランケンハルトに工房を構える製作家。伝統的なスパニッシュギターに傾倒し、製作を学ぶためにスペインのグラナダを訪れ,
同地のマリン、フェレールら名工たちの工房に足しげく通い見識を深めていた時期もあったようです。その後はギターメーカーのヘフナーに一時就職し、マイスターの称号も得ています。1980年代に独立して工房を立ち上げ1990年代になるとヨーロッパを中心に名前が知られるようになりますが、ヨーゼフ・エトベシュが「ゴールドベルク変奏曲」の全曲をギター用に編曲して演奏したアルバムで使用したことから一気に世界的な名声が高まります。製作家曰く材の選定には取り分けこだわり40年以上ねかせた材のみを選定。接着は全て膠を使用しており、全てセラックでの仕上げがなされています。彼の楽器はスパニッシュギターの生々しく明朗で解放的な響きを全体にクラシカルな洗練を施したような音色で、ロマンティックと透徹さが同居した稀有な楽器となっている。上述のエトベシュのほかにもパヴェル・シュタイドル、マルコ・トプチなどのギタリストが使用しています。
[楽器情報]
カール・ハインツ・ルーミッヒ製作 2019年製 Usedの入荷です。柔らかなレモン色の松材と特徴的な赤みのココボロ単板(Cocobolo)との組み合わせによる外観はいかにもこの製作家が好みそうなコントラストで、それを爽やかに、そしてきりっとした佇まいに着地させているところはさすが。ドイツ的な重厚さよりも、どこかスペインへの憧れを彼なりに投影したようなところがあり、瑞々しくそして落ち着いたルックスなのですがそれが自然と彼の個性となっています。
音もまたスペイン的な響きを基本としながらもルーミッヒのスマートな感性が行き渡ったもので、これがとても魅力的。深い奥行きとともに、撥弦の瞬間から洗練され整った音像がくっきりと立ち現れ、その密度を終止まで持続する。一つ一つの音の粒が揃い、低音から高音まできれいな線を形成するような音響はドイツ的と言えますが、その中にクラシック音楽的、ヨーロッパ的としか言いようがない表情の機微が自然に表れてきます。音響設計的にも単旋律では雑味のない凛とした音を、そして和声的旋律では豊かなポリフォニーをしっかりと構築します。奏者のタッチとのリニアニティも高く、旋律の身振りの隅々にまでニュアンスが行き渡る感覚がとても心地よい。ドイツと言えばいまやモダンスタイルのギターですぐれた製作家が多く出てきていますが、ここでのルーミッヒはあくまでもトラディショナルなスタイルで貫徹しており、確固たるブランドカラーを提示しています。
表面板内部構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木、駒板(ちょうどサドルと同一線上)の位置には薄く細く繊細な加工によるプレートが横幅いっぱいにわたって設置されており、さらにボトム寄りのエンドブロックのすぐ近くにはさらに繊細な加工による薄く短いプレートが貼られており、扇状力木はこれらの上を通過してボトム部まで伸びています。この2枚の繊細なプレートの設置はそれぞれの位置関係的にも、また加工処理的にも他には見られない個性的なもので、ルーミッヒの近年の特徴となっています。レゾナンスはF#~Gに設定されています。
割れなどの大きな修理履歴はありません。表面板の指板脇からサウンドホール周りにかけてやや多めに弾きキズがあります。裏板の演奏時に胸が当たる部分に支持具等の装着によるものと思われる四角形の塗装ムラが生じていますが、現状で状態に問題はありません。その他は衣服等による摩擦跡が若干あります。ネック、フレット、糸巻などの演奏性に関わる部分は良好です。ネックシェイプは普通の厚みでややラウンド型のDシェイプに加工されています。糸巻はフステロ製を装着。重量はやや軽めの1.51㎏。
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