マルセロ・バルベロ・イーホ 1995年製 オリジナルモデル

マルセロ・バルベロ・イーホ 1995年製 オリジナルモデル

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.7mm/6弦 3.8mm

〔製作家情報〕
1943年マドリッド生まれ。父は20世紀前半のスペインを代表する名工の一人マルセロ・バルベロ1世(1904~1956)。わずか13歳の時に父バルベロ一世が他界したあと、その弟子であったアルカンヘル・フェルナンデス(1931~)が1957年に自身の工房を開き、バルベロ・イーホは徒弟としてアルカンヘルの工房に入ることになります。アルカンヘルは最初彼をあえてホセ・ラミレス3世の工房に修行に出し、このスペイン最大のブランドで製作の基礎を学んだ彼は、1960年の17歳の年にはすでに最初のギターを製作するまでに技術を磨いていきます。その後アルカンヘル工房に戻り、師と共にまさに職人ならではの実直さと探求心で製作に打ち込みます。「アルカンヘル・フェルナンデス工房品」のラベルを貼って出荷されたそのギターは実質バルベロ・イーホ本人による完全手工品であり、師アルカンヘルに勝るとも劣らない非常なクオリティを有したものとしてコアなギターファンに愛されました。1990年代後半からは自身のオリジナルラベルでの製作も並行して行い、ますます洗練と充実の高まりを見せていた彼でしたが、2005年1月に早すぎる死を迎えてしまいます。渋くやや硬質な粘りを持ったその音色は師アルカンヘル、さらには父バルベロ1世にまでつながるスペインギター最良の伝統を感じさせ、特に晩年に近づくほどに評価の高まりを見せるその楽器は、まさにスペインギター随一の逸品としての評価を不動のものとしています。

〔楽器情報〕
マルセロ・バルベロ・イーホ 1995年製作のオリジナルモデル Usedの入荷です。アルカンヘル・フェルナンデス工房品として出荷していたものとは別に、彼自身のラベル、父バルベロ1世と師アルカンヘルのデザインを踏襲したヘッドシェイプによるフラッグシップモデルとして、1990年代半ばより出荷され始めたもの。

基本的にアルカンヘル工房品を構造的な部分は踏襲していますが、特別に選りすぐられた材(アルカンヘルは数あるスペイン工房の中でも特にハイクオリティな材のストックで知られ、本器でも横裏板ハカランダ材の美しい柾目が特徴的)、そしてなによりもバルベロ・イーホ本人の作家としての充実度には瞠目すべきものがあり、結果このオリジナルモデルをマドリッドでも屈指の名品とするに至っています。

「楽音」としてのニュアンスを自然にそして濃密に備えた音。彼らしい心地よい粘りをともなった発音で、タッチとシンクロするような反応とともに瞬間的に充実した音像が現れ、その密度を保ちながら綺麗に終止してゆきます。倍音を見事にコントロールされた単音は凛として無駄がなく、その連なりは旋律に自然なうねりと有機性を生み出し、和音では各音のクリアネスを保ちながら豊かに拡がります。しっかりとした重心感覚の低音からぐっと引き締まる高音までの音響バランスも見事。そのバランスの中で各弦がそれぞれしっかりとしたアイデンティティを持っているので、曲の中で各旋律が自然にパースペクティヴを生み出し充実したポリフォニーを形成してゆきます。

音響の機能的な洗練とともに、彼自身の個性ともいうべき、どこか人間的で温かみがあり、常に紳士的な音のたたずまいも本当に魅力的。音像はクリアで芯がありながら絶妙に柔らかな触感があり、なんとも耳に心地よい。個性そして機能性とバランスその全体のクオリティにおいてまさしくクラシカルな完成度を備えた1本。

表面板内部構造はアルカンヘルクラシックモデルの定番的なもので、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、扇状力木は計6本がセンターに配された1本を境として低音側に2本、高音側に3本が、ほぼ駒板の横幅に収まるように寄り添って配置され、ボトム部にはこれらの力木の先端を受け止めるように2本のハの字型に配されたクロージングバーという構造。指板低音側の位置には木材にフレキシビリティを確保するため意図的にスリットが入れてあります(これはアルカンヘル工房の標準的な処置)。レゾナンスはG~G#の間に設定されています。

全体に軽微な弾きキズ、衣服等の摩擦あと、打痕等はありますが年代考慮すると良好と言える状態です。割れや改造などの大きな修理履歴はありません。ネックは真直ぐを維持しており、フレットは1~7フレットでやや摩耗見られますが適正値の範囲。ネック形状は薄めのDシェイプでフラットな加工がされています。弦高は2.7/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)で弾きやすい設定になっています。サドル余剰は1.5~2.7mmあります。糸巻はスペイン製Fusteroを装着しておりこちらも現時点で機能的に良好です。

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