星野 良充 1983年製
星野 良充 1983年製
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック /横裏板 カシュー
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 3.0mm/6弦 4.0mm
〔製作家情報〕
1942年札幌市生まれ。20才で中出阪蔵に師事しギター製作の道に入り、6年間の修行後、26才から2年間ヨーロッパにてフレタ、アグアド、ハウザー等の有名ギター工房を訪ね研鑽を重ねました。その後28才で東京に工房を開設。以来40年以上に亘って寡作ながら地道な製作活動を続けていましたが、現在は引退し、中古市場のみで入手可能の貴重なブランドとなっています。
彼のギターにおける良材のセレクションと隅々まで精緻に作り抜かれた上品な外観、そして工作精度の高さ、また鳴りとバランスにおけるしっかりした音響設計は国内でもトップクラスと言える完成度を有しています。その音色は豊かな表情のポテンシャルを有していながらも、紳士的なストイシズムとでもいうべきものがあり、それがこのブランド独自のテイストを生み出しています。国外のギタリストの評価も高く、イヨラン・セルシェル、アリエル・アッセルボーン他の名手に愛奏されていることでも良く知られています。
〔楽器情報〕
星野良充製作 1983年製 松・中南米ローズウッド仕様 Usedの入荷です。この製作家の初期から中期への移行期と言える時期に作られた一本ですが、既にこのブランドの後期の作とも通底する極めて高度な完成が見られます。上品かつストイックで、しかも重厚な外観は細部まで繊細な手が行き届いており、使用された材はいずれも作り手によって厳しく選択されたことがうかがえる見事な良材。華やかさを敢えて抑えて全体を引き立てる優雅さに徹したかのような意匠(ロゼッタなど)、そして塗装の仕上げも素晴らしい一本です。
そして彼の特性であり、国内でもトップクラスと言えるその音響設計もまた本作でしっかりと構築されています。おそらくはドイツの名工ヘルマン・ハウザーを参考にしたであろう、心地よい粘りをもった重厚な低音から透明感のある繊細な高音まで一つの線を形成するようなクラシカルなバランス感。各単音は雑味がなくきりっとした音像ですが、ほのかに柔らかさを纏わせた独特の触感があり、発音の瞬間から終止まで充実した密度で持続します。各音の分離も良く、和音は整った一つの塊として鳴りながらしかしその構成音はそれぞれはっきりと響きます(これはアルペジオやポリフォニックな旋律においても同様です)。音色もまたこのブランドらしい渋めの音ですが、それでも彼の後期のギターのような淡いモノトーンな色合いよりは明るめで、時にスパニッシュな雰囲気も感じさせるものとなっています。
表面板力木構造はサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止める2本のハの字型に設置されたクロージングバー、駒板の位置にほぼ同じ範囲でパッチ板を貼り付けた全体の構造で、やはりハウザーを想起させるもの。レゾナンスはG#の少し下に設定されています。
表面板はセラック塗装仕上げとなっており、微細で浅い弾きキズなどがサウンドホール高音側にやや多く見られますがその他はわずかで外観を損ねるものはありません。横板は数か所に湿度変化などによるとみられる塗装のわずかは変色がありますが、これもまた外観を損ねるほどではないレベルのもので、裏板はわずかに衣服の摩擦あとがあるのみの綺麗な状態。その他割れなどの大きな修理履歴はありません。ネックはわずかに順反りですが標準設定の範囲内。フレットも適正値を維持しています。ネック形状はDシェイプのノーマルな厚みで加工。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は0.5~1.0mmとなっています。糸巻はGotoh製を装着。
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