アントニウス・ミューラー 2005年製
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:スローン
弦 高:1弦 3.6mm/6弦 4.2mm
[製作家情報]
ドイツ、ヘッセン州の豊かな自然が拡がるタウヌスの地に1960年生まれる。16歳の頃より3年間ディーター・ホッフ工房にてドラガン・ムスリンのもとギター製作を学びます。一旦兵役のため製作から離れましたが、その後は再びD.ホッフのもとで働くことになり、そこで後に共同でブランドを立ち上げることになるフランツ・ウルリッヒ・アルバートと出会います。1983年に厳しいマスターディプロマ工芸部門の試験に合格し、翌年アルバートと共にAlbert and Mullerを設立。クラシックギターのみならずアコースティックやマンドリン、古楽器に至るまでの広範なラインナップと極めて高い品質によりドイツでも指折りの手工品ブランドとして名を馳せるようになります。1990年半ばよりミュラーはより高い演奏性と完璧な音響を模索し独自の理論によるクラシックギター開発に専念するようになり、そして2007年二層構造の表面板によるギターを発表するに到ります。これはいわゆる「ダブルトップ」の構造をミュラーなりに解釈し再構成したもので、自然素材のみ(Nomex素材を使用しない)で作られます。これが大変な反響を呼び、現在ミュラーの「ダブルトップ」はコンサートギタリストを中心にマストアイテムの一つとしてなんと10年以上のウェイティンリストを抱えるまでになります。2013年には故郷ヘッセン州のアールベルゲンに工房を設立し息子のFelix とともに現在も製作を続けています。
[楽器情報]
アントニウス・ミュラー 2005年製 クラシックモデル 中古の入荷です。後に彼のトレードマークとなるダブルトップではなく、オーソドックスなスタイルで作られた一本。内部構造は左右対称の7本の扇状力木にボトム部でそれらを受け止める2本のクロージングバー、駒板位置に貼られたパッチ板、サウンドホール上下のハーモニックバーとその間を高音側と低音側とに一本ずつの短い力木という配置。レゾナンスはGの少し下に設定されています。
ドイツ的な硬質で程よい粘りを持った発音ですが、ハウザー3世などよりも音像はまろやかで、全体に温かみのある音色が特徴。またやはりドイツ的な特徴として、単音は低音から高音まで引き締まり自然なバランス、そして和音でのまとまりと深みと迫力、その対比が素晴らしくとても音楽的です。ネックは薄めのDシェイプ(1F厚み20.0mm)でコンパクトで押さえ易く、高い演奏性が追求されています。
割れなどの修理履歴はなく、また全体的にほんの若干の弾き傷、衣服の摩擦による少々の塗装ムラがあるのみで、15年を経た楽器としては良好な状態と言えます。表面板は経年によるほんの若干のゆがみがありますが、今後の使用には全く問題ございません。塗装はオリジナルで横裏板ラッカー、表面板がセラック。糸巻きはスローン製。20フレット仕様。ブリッジ弦穴はダブルホール仕様となっています。