新着 ホセ・ラミレス3世 1980年製 モデル 1A

ホセ・ラミレス3世 1980年製 モデル 1Aの入荷です。

1970~80年代の1Aモデルのエッセンスが十全に備わった一本。
表面板はウェスタンレッドセダー、横裏板は良質な中南米産ローズウッド(横板は内側にシープレスを貼り付けた2重構造)。
このブランドならではの濃密なラミレストーンがここでも十全に聴かれ、高音の太く艶があり豊かな響き、低音の迫力はやはり魅力的。
そしてここでは中南米産ローズウッド仕様ゆえの、全体に独特の気品が漂う洗練された音色もまた抗し難いキャラクターとなっています

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ポリウレタン
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.8mm/6弦 4.2mm

[製作家情報]
スペインが誇る老舗工房にして世界でもっとも有名なギターブランド ホセ・ラミレス Jose Ramirez。ホセ・ラミレス1世(1858~1923)の時代から現在のホセ・ラミレス5世まで、1世紀以上に渡りスパニッシュギター製作史のなかで最も重要なブランドの一つとしてその名を刻み続けており、いまなおワールドワイドにマーケットを展開する工房です。

なかでもとりわけ評価が高く「Ramirez dynasty」 と言われるほどに豊饒の時代とされたホセ・ラミレス3世(1922~1995)の時期に製作されたギターは、革新的でありながら幅広いポピュラリティを獲得し、世界中のギタリストとギターファンとを魅了し続けました。1950年代末から1960年代、パウリーノ・ベルナベ、マリアーノ・テサーノスといった名職人が職工長として働き、高級手工品の品質を維持しながら大量生産を可能した独自の工房システムを確立します。そして1964年にこのブランドのフラッグシップモデルとして世に出した「1a」は、表面板にそれまでの松材に代わって杉材を使用、胴の厚みを大きくとり、横板は内側にシープレス材を貼り付けた二重構造、弦長は664mmで設定(通常は650mm)、さらに塗装には従来のセラック塗装からユリア樹脂のものに変更し耐久性を飛躍的に増すとともに、「ラミレストーン」と呼ばれる独特の甘く艶やかな音色を生み出し、真っ赤にカラーリングされた印象的な外観と相まってギター史上空前のポピュラリティを獲得することになります。

これらラミレス3世がクラシックギターに対して行った改革はマーケット戦略の面でも、また製作の面でも実に独創的でしかも時代の要請に十全に応じたもので、のちのギター製作全般に大きすぎるほどの影響を及ぼしたのと同時に、まさにクラシックギターのイメージを決定するほどに一世を風靡しました。

ラミレス3世の息子4世(1953~2000)は18歳の時に父ラミレス3世の工房にて徒弟として働くようになり、1977年には正式に職人として認められます。1988年には妹のアマリアと共にブランドの経営を任されるようになり、父の製作哲学を引き継ぎながら、より時代のニーズに則した販売戦略(エステューディオモデルの製作、標準的な650mmスケールの採用等々)を展開しさらにシェアを拡大してゆきますが、3世亡き後わずか5年後の2000年にこの世を去ります。

その後もアマリアを中心に柔軟な商品開発を継続しますが、2000年代以降はむしろ名手アンドレス・セゴビアの名演と共にその音色が記憶に残る3世と4世の時代につくられたモデルに人気が集中するようになり、特に製作を担当した職人のイニシャルが刻印されていた1960年代のものは往年のファンに現在も愛奏されています。

[楽器情報]
ホセ・ラミレス3世 モデル 1A 1980年製の入荷です。1960年代、1970年代と続き、ブランド的には人気の絶頂ともいえる時期のもので、当時かなりのペースで製作が行われていたはずですが、しかしながらブランドの名に恥じぬ最高品質を維持していたのはやはり驚かざるを得ない。製作担当者のイニシャルを刻印する制度は既に70年代最初に廃止していましたが、表面板のボディ内側には番号がスタンプされ、それによって担当者を判別していました。本作は「9」がスタンプされており、これはラミレス公式の職人リストではJuan Garcia Rey製作となっています(イニシャルはJG)。

1970~80年代の1Aモデルのエッセンスが十全に備わった一本です。表面板はウェスタンレッドセダー、横裏板は良質な中南米産ローズウッド(横板は内側にシープレスを貼り付けた2重構造)、弦長は664mmでネック角度はボディに対して深くとっており、さらに指板は低音側から高音側に向かって大きく傾斜させて高音は押さえやすくまたメロディを歌わせやすくし、低音側は力強い響きが出るような工夫が施されています。

内部構造はモデル1Aの基本的配置。サウンドホール上側に一本、下側にホールの真下で交差する2本のハーモニックバーを配置し(1本はボディ上部低音側から下部高音側に向かって斜めに伸びてゆくように配置されている)、扇状力木は合計6本がセンターに配された1本を境に高音側に2本、低音側に3本それぞれほぼ平行に近い角度で設置。そして扇状力木の先端をボトム部で受け止める2本のハの字型に配置されたクロージングバー、ブリッジ位置には駒板よりも少し幅広の薄いプレートが貼られているという構造。サウンドホール上下に配置された3本のハーモニックバーは3本とも低音側のみ数センチほどの開口部が設けられています(扇状力木はそれらを通過せず、ホールの下のところで止まっています)。レゾナンスはG#の少し下に設定されています。

このブランドならではの濃密なラミレストーンがここでも十全に聴かれ、高音の太く艶があり豊かな響き、低音の迫力はやはり魅力的。そしてここでは中南米産ローズウッド仕様ゆえの、全体に独特の気品が漂う洗練された音色もまた抗し難いキャラクターとなっています。

塗装はオリジナルのウレタン塗装。表面板サウンドホール周りにほんの若干のスクラッチ跡がありますが、その他は全体に綺麗な状態です。ネックはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内のもので演奏性には影響ありません。フレットやや摩耗ありますがこちらも現状で演奏への影響はありません。現在サドルはぎりぎりまで下げられており、弦高値はこの時期のラミレスとしては低めの2.8~4.2mmで設定されています。ネックは普通の厚みのフラットなDシェイプに加工。糸巻きはオリジナルのフステーロを装着。

 

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