ティノ・バティストン 2006年製

ティノ・バティストン 2006年製

ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:セラックニス
糸 巻:ルブナー
弦 高:1弦 2.9mm/6弦 4.0mm

[製作家情報]
フランス北東部のブゾンヴィルに工房を構える製作家。もともとはドイツ生まれで、ギター製作を学べる環境がそのころ彼の周りには整っていなかったため、1997年からまずは家具職人としての修行を始めます。木工の勉強と実践とを積み重ね、また数年にわたる海外渡航などでその見聞をひろめ技術を確実に向上させる中で、彼はギター製作への自分の意思と道のりをより確実なものしてゆきます。そして2004年よりデビッド・ルビオ工房出身で当時すでにドイツでの評価を確固たるものにしていた日本人製作家カズオ・サトーのもとで修業をすることになり、この伝統とモダンの一つの理想的な融合を成し遂げたともいえるブランドの製作美学をじっくりと学んでゆきます。カズオ・サトーのもとで数年の修行の後、もともと高い木工技術を身に着け、またギター製作におけるセンスも並々ならぬものを有していた彼は早くも自身の工房を開設し、独立したブランドとして展開します。ドイツ的な精巧さを極めた工作技術、優れた材のセレクトによるフォトジェニックな外観、そしてモダンスタイルの高い演奏性と高度な遠達性とを有したギターはプレイヤーを中心に評価が高まります。現在は上記のフランスに居を移し工房も移転して、アコースティック、クラシックを中心にあくまで丁寧な手仕事にこだわった製作を続けています。

[楽器情報]
ティノ・バティストン 2006年製作 No.4 同ブランドとしては珍しい中古の入荷です。独立して工房を立ち上げてからの最初期のもので、シリアルナンバーから彼自身のラベルで製作された4番目のものということになります。直前まで教えを受けていたカズオ・サトーの影響が顕著に表れたモデルであると共に、既に音響と音色におけるバティストン自身の美学が刻印されたものとなっており、ブランドとしての個性を確立しつつあった時期であることがうかがえます。

内部構造は太く高く加工された強固なバーがサウンドホールを囲むように設置されており、力木は扇状配置ではなくブリッジプレートの位置を中心にして放射状に広がるように計12本が配置されたいわゆるradial bracing pattern 構造。表面板はちょうどくびれの部分から上側は厚めにして振動を抑制するのとは反対に下側は薄く加工されており、ブリッジを中心する表面板下部の振動効果を最大限に高める工夫がされています。さらに表面板と横板との接合部にはこれも通常のペオネスとは異なり、独自の設計によるライニング加工が施され上記の振動効果に寄与しています。レゾナンスはFの少し上に設定。

モダンギターらしい実に迫力ある音響とヴィヴィッドな素早い発音がまずは印象的。しかしながら多くのモダンギターが言わゆる「鳴りっぱなし」でニュアンスを欠いたものであるのに対し、ここでのパティストンはドイツ的な音色に主眼を置いており、硬質できりっとした、そして渋い音色で音楽的な表情も不足なく、伝統とモダンの無理のない融合が達成されています。このドイツ的なニュアンスは師のカズオ・サトーにはむしろ聞かれなかったもので、ここに彼自身の個性が大きく表れていると言えるでしょう。その他も音量のダイナミズム、反応性、弾き易さ等々モダンギターの良質な面はしっかりと備わっており、この製作家がこの時期既に端倪すべからざる才能を有していたことがうかがわれます。

ネックは薄めのCシェイプで加工され、更に指板は低音側から高音側にかけてやや強めに傾斜がかけられており、左手の演奏性に寄与しています。非常に速い音のレスポンスゆえに右手のタッチにも負荷がなく、りょうて表面板全体に細かな弾き傷や小さな打痕等見られますが、割れなどの大きな修理履歴はございません。横裏板はわずかに衣服等の摩擦痕が見られる程度で良好な状態を維持しています。薄く加工された表面板のため力木の配置に沿って若干の波うちがありますが現状で継続の使用に問題ございません。その他ネック、フレット、糸巻きなどの演奏性に関わる部分も良好です。良質なおモダンタイプギターをコストを抑えてご検討の方にはぜひおすすめしたい一本です。

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