新着 「尾野 薫80号 ハウザー1世モデル 2007年」

尾野 薫80号 ハウザー1世モデル 2007年

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラックニス
糸 巻:スローン
弦 高:1弦 2.6 mm/6弦 3.8 mm

〔製作家情報〕
1953年生まれ。中学生の頃からギターを弾き始め、大学の木材工芸科在学中その知識を活かして趣味でギターを製作。 その類まれな工作技術と音響に対するセンスは注目を集めており、愛好家達の要望に応えて27歳の時にプロ製作家としての本格的な活動を開始。 同時期にアルベルト・ネジメ(禰寝孝次郎)に師事し、彼からスペインギターの伝統的な工法を学ぶ。 その後渡西しアルベルト・ネジメの師であるグラナダの巨匠アントニオ・マリン・モンテロに製作技法についての指導を受け、 2001年には再びスペインに渡りホセ・ルイス・ロマニリョスの製作マスターコースも受講している。 さらにはマドリッドの名工アルカンヘル・フェルナンデスが来日の折にも製作上の貴重なアドバイスと激励を受ける等、 現代の名工達の製作哲学に直に接し学びながら、スペイン伝統工法を科学的に考察し理論的に解析研究してゆく独自の方法でギターを製作。 日本でのスペイン伝統工法の受容の歴史において、アルベルト・ネジメと並ぶ重要な製作家の一人として精力的な活動を展開している。 その楽器はあくまで伝統的な造りを基本としながら、十分な遠達性、バランス、倍音の統制において比類なく、極めて透徹した美しい響きを備えた、 現在国内のギター製作における最高の成果を成し遂げたものと言える。

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〔楽器情報〕
尾野薫製作 80号ハウザー1世モデル 2007年製中古が入荷致しました。
自身のオリジナルモデルのほか、アントニオ・デ・トーレス、ロベール・ブーシェ、ホセ・ルイス・ロマニリョスなどの極めて高度なレプリカシリーズも好評な氏のラインナップの中でもとりわけ人気の高いヘルマン・ハウザーモデル。準拠しているのはもちろんハウザー1世による名品「セゴビアモデル」1937年製ですが、尾野氏はここでオリジナルのエッセンスに最大限の敬意を払いながら、自身の音響哲学を絶妙にミックスさせ、彼ならではの見事なハウザーに仕上げています。

内部構造はサウンドホール上側に2本(一本はバーというよりもプレートに近い形状)、下側に1本のハーモニックバー、7本の左右対称の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止める2本のハ字型のクロージングバー、そしてブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いパッチ板が貼られており、ハウザー1世セゴビアモデルの基本構造となっています。表板と横板の接合部分はペオネス(三角型のウッドブロック)が間隔を空けて設置されており、これは尾野氏のオリジナルになります。レゾナンスはGの少し下に設定。

いかにもハウザーらしい心地よい粘りと反発感を伴った発音が素晴らしい。響きには雑味がなく、しかし決して乾き過ぎず、基音と倍音の配分バランスが絶妙に設定された響きは尾野氏ならではの至芸と言えるでしょう。凛とした艶やかな高音から充実した中低音を経て重厚な低音へと至る、その重心感覚とバランスは見事なもので、単音では音が粒立ち、和音ではそれぞれの音がしっかりとした遠近感を持って響きます。この特性は例えばポリフォニックな楽曲の演奏においては各声部のキャラクターを明確化するのに最適で、やはり西洋クラシック音楽において十全な効果を発揮します。音色は指先のほんの微妙な変化にも寄り添い、渋めな音色ながらも表情は実に豊かで多彩。そのためオリジナルのハウザー同様にしかるべきタッチの熟練が要求されますが、フィットした時の音楽的充実度は比類がないと言えるほど。

現在の同モデルよりやや軽いボディで、発音はその分ややヴィヴィッドな感触。経年変化で飴色に変化した表面板はヴィンテージ風な味わいを醸し出し、ロゼッタやヘッドインレイの渋い意匠が全体に気品を付与しています。ネックはDシェイプでスクエアに近い形状に加工されています。修理履歴は無く、ほんの若干弾き傷が衣服の摩擦等が見られますが全体的に良好な状態を維持しています。ネック、フレット、糸巻き等の演奏性に関わる部分も問題ありません。

氏の現在の高密度なハウザーモデルとはまた異なる、滋味と清冽さが同居する深い味わいを備えた一本です。

 

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