新着 ジェンナーロ・ファブリカトーレ 1827年製
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ネック:エボニーその他
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:不明
弦 高:1弦 3.2mm/6弦 4.2mm
[製作家情報]
イタリア、ナポリ様式と言われる19世紀ギターの中でその代表格とされるファブリカトーレ一族。一族の中で当時もっとも有名だったジョバンニ・バティスタ(1750~1812)とその息子ラファエル(1770~?)とは別に、19世紀初頭の需要の増大にしっかりと呼応する形で充実した生産体制を構築したジェンナロ1世(1770~1844)とその息子たち(特にジェンナロ2世)。ギターファンにとってはマウロ・ジュリアーニやパガニーニ(1826年製を所有していた)が愛用していたことでも特別なブランドですが、19世紀ギター全体を代表する音と意匠として現在もラコートやパノルモなどと並び人気のアイテムとなっています。
[楽器情報]
ジェンナロ・ファブリカトーレ作 1827年製ロマンティックギター ヴィンテージの入荷です。ラベルにはToledo N.297とありトレド通297番地にあった工房で製作されています。当時かなりの生産本数でいくつかの工房を稼働させていたことから、本作もまたジェンナロ本人の作ではなく工房の職人による製作と思われます。しかしながらこの当時の弦楽器系有名工房の工作技術の異様な高さと芸術的完成度はここでも例にもれず、本作はその確かなクオリティの証左となる一本と言えます。
特徴的なボタニカルな模様を黒檀による木彫であしらった表面板の意匠はこのブランドの定番として知られ、多くの他ブランドでも取り入れられる代表的なデザインですが、やはりここでの仕事は見事。指板は有名なナポリ式(黒檀の指板が12フレット以降も表面板にフラットに組み込まれるように造作された様式)ではなく、13フレット以降は表面板に直接フレットが打ち込まれたいわゆるフラッシュボード仕様。ヘッドは木ペグではなくスロッテッドで機械式の糸巻を装着しています。そしてヘッドプレートから指板そして表面板パーフリングとロゼッタにいたるまでに施された白蝶貝による花模様の螺鈿細工。横裏板には野趣あふれる木目のカーリーメイプル(裏板はブックマッチなしの一枚板)をあしらい、全体は豪奢とエレガンスの素晴らしいバランスで仕上げられており、これは当時このブランドの最高級モデルとして出荷されていたもの。
音は深く、素朴で滋味にあふれ、そして表情豊か、誰もが思い描く19世紀サウンドを円満に備えた一本です。
表面板ブリッジプレート上下、や指板両脇部分、横裏板はメイプルのバール部分などに割れありますが適切な修理がなされており、現状で使用には全く問題ございません。ネックはやや順反りですが演奏性には問題のないレベルです。ナットは黒檀製、サドルはローズウッド材仕様。内部構造はサウンドホール上下に1本ずつの木目に対し垂直方向のハーモニックバー、そしてブリッジとサウンドホールのちょうど中間地点に低音側から高音側にかけてやや斜めに下がってゆくようにして設置されたもう一本のバー、ブリッジ位置には駒板よりも少し広い補強板が貼られています。レゾナンスはB~Cの間となっています。ジョバンニとジェンナロに共通する製作技法として知られるようになった紙を使用した接着方法(ジェンナロは当時製紙工場も同時に操業していたとのことです)も本器のボディ内部でいくつか確認されています。
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