新着 ブライアン・コーエン 1983年製

ブライアン・コーエン 1983年製が入荷しました。

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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 4.0mm

[製作家情報]
ブライアン・コーエン Brian Cohen 南アフリカ共和国出身で現在はイングランド、サリー州のギルフォードに工房を構える楽器製作家で、古楽器から現代までの弦楽器全般とクラシックギターを製作しています。南アフリカ時代の1972年から独学でギター製作と修理を始め、同地を演奏旅行で訪れたSergio と Eduardo の Abreu 兄弟(日本では通例「アブリュー」と記されていますが「アブレウ」のほうが正しいとされており、英語圏でも「アブレイユ」と発音されることがほとんど)が使用したデビッド・ホセ・ルビオ(1934~2000)のギター修理を手がけたことを機に、製作家として身を立てることを決意、1974年にルビオの工房があるイギリスへと渡ります。当時まだ未熟だった彼はルビオ工房の職人にはなれなかったものの、ルビオはこの若い製作家のためにアドバイスを与え、やがて一流の職人となった彼は自身の製作と平行してルビオ工房品の作業も行っています(特にルビオが亡くなるまでの10年間はほとんどの受注品を彼が組み立てていたとのこと)。

彼がイギリスに渡った1970年代はクラシック音楽界で古楽器ブームが始まっており、そうしたムーヴメントに対応するかのように弦楽器製作においてもピリオド楽器の需要が高まりを見せてゆきます。1976年にリュート奏者のアンソニー・ルーリーがロンドンに設立したその名もEarly Music Cetre の工房をリサーチや製作のためにシェアするという環境に恵まれ、ここで3年間、彼は数多くのルネッサンス時代からの撥弦楽器を直に研究、修復し、そして自身のモデル製作に活かしています。彼はまた弦楽器属の研究と製作にもただならぬ情熱を傾けており、特にチェロでは1986年にCrafts Council Awardを受賞、1990年にはManchester International Cello Festival で銀賞を獲得するなど高い評価を得ています。またクラシックギターにおいても1989年にパリ ギター製作コンクールで2位となり、しっかりと地歩を固めてゆきます。

1990年には名手ジュリアン・ブリームからヘルマン・ハウザー1世(1882~1952)1940年作セゴビアモデル(Rose Augustine から借りていたという伝説的な一本)のコピーモデル製作を依頼されます。楽器にも知悉したこの20世紀最大のギタリストから得たものはコーエンにとってあのルビオにもまして大きかったようで、その後の科学的な測定に基づく精密な設定、音響学的なアプローチからの木材の選定方法へと彼を導いてゆくことになります。ここで彼が行った研究とその結論としての製作方法は非常に興味深いものですが、詳しくは語られておらず、しかしいずれ書物としてまとめる意向とのこと。

クラシックギターのみならず、ピリオド楽器を含む弦楽器全般のおける研究と製作というアプローチはやはりルビオを思わせるところがあります。そしてルビオ同様に西洋音楽全体の脈絡の中でクラシックギターの位置を見据える製作態度が彼には通底しており、英国という風土的感性がそこに加わったような楽器はまさにクラシカルな落ち着きと力強さがあり、その美しい仕上げも相乗してイギリスの中でもトップクラスの人気ブランドとなっています。

[楽器情報]
ブライアン・コーエン製作 1983年製 No.149 Usedの入荷です。彼の初期から中期へと向かう時期の作(ラベルにはその当時工房のあったLondonと記されています)で、デビッド・ルビオという偉大なメンターの影響を受けながらも、スペインギターへの傾倒を如実に感じさせる興味深い一本です。力木構造はサウンドホール上側に1本(これとネック脚との間に1枚の大きめな補強プレート)、下側に1本の水平なバーと低音側から高音側に向かって傾斜して設置されたもう一本のバー、そして9本の扇状力木にそれらの先端をボトム部で受け止める2本のハの字型に配されたクロージングバー、駒板位置には薄いプレートが貼られているという全体の配置。レゾナンスはGの少し上に設定されています。外観的には黒と赤を基調とした火炎モチーフ(?)のロゼッタデザインやヘッドシェイプなどはルビオの影響を見て取れますが、上記の構造はその特徴から直ちにイグナシオ・フレタを想起させます。

しかしながら音はむしろドイツ的とも言えるもので、粘りをともなった硬質な発音と、その瞬間から整った音像が立ち現れ終止まできれいに持続してゆく鍵盤的な音響が特徴となっています。その単音は十分な密度と多彩な表情のポテンシャルを含んでおり、まさしくクラシカルな気品を伴って不足ありません。

製作から40年を経た楽器としてはキズ等少なめで外観的に良好な状態です。表面板の低音側指板脇に割れ補修歴ありますが」適切な処置が施されており現状で問題ありません。ネック、フレットの状態も適正です。ネック形状は普通の厚みのDシェイプ加工、弦高値は4.0/2.8mm(6弦/1弦 12フレット上)でサドルには1.0~1.5mmの余剰がありますのでより低く設定することも可能です。糸巻はドイツ製高級糸巻のライシェルに過去交換されており、ヘッド厚みよりも幅があるためわずかにはみ出していますが機能上の問題はありません。

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