ホセ・ヤコピ 1976年製

ホセ・ヤコピ 1976年製

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラックニス
糸 巻:オリジナル
弦 高:1弦 3.2mm/6弦 3.5mm

[製作家情報]
ホセ・ヤコピ(1916~2006)。スペインのビトリア生まれ。父親のガマリエル・ヤコピの工房に入り、18歳の時に最初のギターを製作しています。1949年には家族でアルゼンチンのブエノス・アイレスにほど近いサン・フェルナンドに移り住んで工房を開き、そこで生涯ギターを作り続けました。最初は父親と同様にアントニオ・デ・トーレスを規範とした伝統的なスペインギターを製作していましたが、移住する直前の1947年ごろから父親と共に発案した、通常とは逆方向に放射状に配置された扇状力木構造を採用するようになり、これがこのブランドの特徴となります。本国アルゼンチンではその需要の増大に対応するために工房品含め年間約300本のギターを出荷していた時期もありますが、最上位モデルはその1割ほどで、良質な材を使用して本人が製作しています。

非常に独特な音響と音色を備えており、中低音から低音にかけての重厚で柔らく、奥行きのある深い響きと引き締まって艶やかな高音との対比とバランスが素晴らしく、ポリフォニックな曲を演奏した時の立体感は他のギターでは味わえない魅力があります。また音色には南米的な澄んだ色気があり、これが古典と現代の両方の雰囲気を併せ持つことから、クラシック奏者からポピュラー音楽までの幅広いユーザーに愛されてきました。マリア・ルイサ・アニードやエドゥアルド・ファルーらが愛用し、また近年ではボサノヴァや南米音楽の愛好家にも絶大な支持を受けています。

現在は息子のフェルナンド・ヤコピが工房を継いでいますが、ファンの間ではやはり1960年代から亡くなる前の1990年代までのJose本人による楽器に人気が集中しています。

[楽器情報]
1979年製、No1752 Usedが入荷致しました。このブランドの定番モデルで横裏板はインディアンローズウッド仕様、真珠貝をモチーフにしたツマミの有名なオリジナル糸巻きを装着し、ホセ・ヤコピ本人のサインが記されたラベルが貼られています。ヤコピらしい渋く落ち着いた全体の外観はやはり魅力的で、装飾等も慎ましいものながら、ほどよくエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。

全体を包み込むように響くふくよかな中低音~低音と、明確で強い表情を備えた高音との対比が彼の特徴とされていますが、本器ではそのような南米的な音響というよりもむしろ彼の出自であるスペインギター的なバランス感があり、クラシカルな雰囲気。しかしながらその音色は渋く、良く歌い、豊かに変化する表情はヤコピならでは。

内部構造は胴底のフットブロックを起点とするようにして、サウンドホール方向に向かって扇を拡げてゆくように配された左右対称6本の扇状力木で、通常の扇状力木とは開く方向が逆になっている特有の構造。センターのブックマッチ部分は力木ではなく数個の小さなパッチ板が貼られており、これもヤコピの常套的な処置。表面板を横切って配置されるバーはサウンドホール上下に一本ずつ、さらにネックヒール部近くに位置にも短いバーが一本設置されています。表面板と横板との接合部分に接着されるペオネス(木製の小型ブロック)は三角形タイプではなく、断面の形がちょうど椅子のような形状になったものを設置。レゾナンスはG#の少し下で、これはヤコピとしてはやや高めな設定。

年代相応に弾き傷、打痕、弦とび跡等有りますが外観を著しく損なうものではいずれもありません。ネック、フレット、糸巻き等の演奏性に関わる部分は状態、動作ともに問題ありません。ネックはヤコピのものとしてはやや薄めに加工されたCラウンドシェイプでコンパクトなグリップ感。

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