新着 ヘスス・ベレサール・ガルシア 1976年製

ヘスス・ベレサール・ガルシア 1976年製が入荷しました。

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※ただし販売済の楽器は該当ページが表示されませんのでご了承ください。

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラックニス
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.3 mm/6弦 4.0 mm

[製作家情報]
ヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)
スペイン、マドリッドの生まれ。13歳から機械工として働き始めた彼は同時にフラメンコギターの演奏も本格的に学んでおり、17歳の時にはプロギタリストとして活動も始めていました。1945年、25歳の時に「エルナンデス・イ・アグアド」のブランド名で知られるギターの製作者の一人マヌエル・エルナンデスの娘エミリアと結婚。彼は演奏家として「アグアド」のフラメンコギターを使用していましたが、そのような環境ゆえ次第にギター製作にも興味を持つようになります。そんな彼の気持ちを知ってか、1966年のある日義父のエルナンデスより「アグアド」の後継者になってほしいと相談を持ち掛けられます。当時すでにエルナンデスの相方であるビクトリアーノ・アグアドは身体の不自由を訴え始めており、ブランドの存続を憂いての提案であるとともに、ベレサールの実直な人間性と機械工としての技術の確かさを見込んでのことであったでしょう。彼は製作家になる決心をし、46歳にして一から製作方法を学びます、師匠はもちろんエルナンデスとアグアドの二人。2年間の修行を経て1968年に独立。機械工の仕事も辞し、ギター製作一筋に従事してゆきます。

生涯に製作したのはわずかに83本。彼自身はフラメンコギタリストでしたが、試作品として自分のために製作した最初の一本(No.1)と2本目(No.52)を含む3本のみがフラメンコギター、あとの80本はクラシックギターとなっています。独立後に製作したギターはNo.103から製造番号が付けられており、最後の1本はNo.183 。

師であるエルナンデスとアグアドの製作方法、塗装、デザイン、そして音色的に多くものを顕著に引き継ぎながらも、そのトータルクオリティと芸術性の高さにおいて非常に個性的であり、「アグアドの後継者」という枠に収まらない強固なアイデンティティを持っています。最大の特徴である響きと音色は、どこまでも優しく力強く、独特の肌理を持ち、自在に表情を変えてよく歌い、そして余計なものが何もないといったもので、師のギターが時に「スネアドラムのような」と評されるほどのマッシブな音の迫力を湧出するのに対し、ベレサールは常に揺るぎのないジェントルな強さに満ちています。そしてアグアドのギターがその天才性でしか説明がつかないような個性を放つのと同様に、ベレサールのギターもまたスペインギターの中でも特異な存在となっています。

彼を直接知るひとはみなその優しくまじめな人柄のことを話し、その彼が作ったギターもまた彼の性格そのままに、暖かく耳に心地よい響きを有したものだと語ります。亡くなる直前まで没頭するように製作に従事し、1986年8月28日惜しまれつつその生涯を閉じます。

[楽器情報]
ヘスス・ベレサール・ガルシア 1976年製作 No.139 クラシックモデル Usedの入荷です。
ベレサールの製造番号は独立後最初に作られた1本にNo.103があてられているので、本作は37本目のギターとなります。ふっくらとした優美なライン、ある種の荘厳ささえ感じさせながらあくまでも洒脱なヘッドデザイン、独特な調合によるセラックで深い光沢をたたえた塗装仕上げ等々アグアド的なものを彷彿とさせる外観がまずは非常な魅力となっています。全体的に硬質な響きで発音にも(いかにもマドリッドスクールが共通して持っていたところの)独特の反発感があり、しっかりと弾ききらないと表情のコアな部分を引き出せないような難しい部分がありますが、その音楽的表情のポテンシャルは非常に深くそして豊かなものがあります。しかしながら音の「色」にはやはりベレサールらしい温かさがあり、これこそが彼のギターと他のブランドとを分ける最大の魅力となっています。

表面板の力木配置は1960年代後半のアグアドギターにほぼ準拠。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、サウンドホール真下の位置から高音側横板に向かって斜めに下りてゆくように配された1本のトレブルバー、扇状力木はセンターに配された1本を境にして高音側に2本と低音側に3本の合計6本、それらの先端をボトム部で受け止める2本のハの字型に配置されたクロージングバー、ブリッジ位置には駒板とほぼ同じ大きさのパッチ板が貼られているという全体の配置。レゾナンスはGの少し上に設定されています。この構造は彼の初期のギターから続くものですが、ベレサールはここで上記のトレブルバーをゆるやかにカーブさせて加工するという工夫を行っており、しかも横板との接点をほぼ駒板の真横の位置まで下げて高音側の振動領域をより狭く設定しています。

表面板のサウンドホール周りは弾き傷等やや多く見られますがその他は年代相応のレベルです。横裏板も軽微な摩擦跡のみですが、ネック裏はやや傷が多く一部塗装の剥がれも見られます。塗装はオリジナルのままを維持しています。ネックは厳密にはほんのわずかに順反りですが演奏性に影響はないレベル、フレットも適正状態を維持しています。ネック形状は丸みのあるCシェイプで厚みはノーマル、弦は中庸からやや強めの張りになっています。ボディ重量は1.47Kgとやや軽め。ラベルにはこのギターを注文者「Toru Kannari」への献辞が直筆で書かれています。

 

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